刀剣の手入れと保存

私は日本刀は陶磁器や漆芸品と同じように工芸品だと思っています。
工芸品であるからこそ、手入れを大切にする必要が有ります。
刀の材料である鉄は錆びます。
そして錆びるからこそ、鉄は生きているとも言えると思います。
ステンレスなどはもはや鉄ではありません。
私はこの生きていて手間がかかる鉄が面白く、大好きなのです。

刀手入れの基本

>刀ができるまではこちら

刀の手入れの基本は錆びさせない事です。
そのために、常に刀の表面に油が塗られた状態である事がベストです。
油は古くは丁子油が用いられました。
ただし、刀に塗る油は丁子油でなくてもかまいません。
要は空気から遮断し、酸化を防げれば良いので、上質な機械油などでも間に合います。
ただし気をつけなければならないのは、
油も酸化するので、長く放置すると固着してしまう事です。

油の塗り方について

最近は合成油で刀用のものがあるので、
こういった油であれば半年から一年に一回塗り替えれば問題ないでしょう。
大事なのは油の塗り方です。
油を一度にたくさん付けておけば、
長く持つだろうと考える方もいるようですがそれは間違いです。
たくさん付けてしまうと、油は垂れて、鞘に染みてしまいます。
すると埃が付き、湿気を呼んでしまう。
よって錆びてしまうというわけです。
油は薄く満遍なく丁寧に塗る事が大切です。

油の塗り替え

油を塗り替えるとき、打粉を打ち、古い油を全部拭き取る必要が有ります。
拭き取りに使うものはティッシュでもかもいません。
ただ、個人的にはティッシュですと格好が悪いので、
私は奉書のもみ紙を使っています。
これは伝統的な拭い方のようですし、何より格好がつきます。

奇想天外な手入れ方法

手入れの方法については古人もいろいろと工夫をしたようです。
神社に奉納されている太刀や長刀などは、漆を塗ったりしたそうです。
また、これはアメリカでの話ですが、油の甕に刀を吊るして置いたと言う、
信じられない方法をとっていたそうです。
これでは茎(なかご)の錆び色が変わってしまわないか心配になります。
茎の錆び色は時代の古さを物語り、名刀ほど美しい錆び色を表すものです。
この色が変わってしまうのは非常に残念な事です。

刀の保存方法

まずは刀を拵からはずし白鞘に入れます。
そして棟を下にして寝かせるのが良いです。
次に置き場ですが、やはり人の目につくところに置いておくのは危険でしょう。
今は少ないかもしれませんが、納戸があればこういったところが好ましいと思われます。
そして入れ物は鍵のかかる桐箱が良いでしょう。
内ばりに桐を張った金庫などは最適です。
それは桐箱が湿度変化や温度変化の対応に優れており、
刀の状態をうまく保ってくれるからです。
ただし、あまり厳重にしまいすぎると開けるのが面倒になり
手入れがおろそかになりがちですので注意が必要です。
また、よく桐箱の中に綿を入れているのをよく見かけますが、
綿や紙は一度湿気を含むとなかなか逃げません。
ですので運搬の時など緩衝剤としていれた時は
運び終わったら必ず取るようにしましょう。